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1997年8月の横浜ベイスターズ 振り返り

優勝した1998年も確かに神奈川は熱かった。ベイスターズだけでなく様々なスポーツで優勝するなど盛り上がっていた。しかし、ベイスターズファンにとっては未知であった優勝争いというものを初めて経験したこの夏、忘れることのできない興奮と感動を味わった。その1997年8月を振り返る。

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4月のレビュー

最初から読む場合は、こちらの記事からどうぞ。

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10年ぶりの8連勝!ヤクルトへの挑戦権

敵地で広島をスイープし2位浮上

1日からは広島での3連戦。0.5ゲーム差で2位、3位という両チーム。ヤクルトへの挑戦権をかけたカードとなった。

初戦は野村が先発した横浜だったが、3回に金本の打球が野村の左膝に当たり、降板。幸い打撲で全治2、3日だったが、3回から継投となる。五十嵐、関口と繋ぎ、最後は島田を3イニング投げさせて、広島打線を抑え込んだ。同点の7回に広島の守備の乱れで勝ち越すと、進藤の3ラン、鈴木尚のソロで追加点を奪って快勝した。

2戦目はマホームズが広島に先行を許す展開も、8回に4-4と追い付き、延長戦へ持ち込む。10回にローズが2ランを放って連勝。そして、3日の3戦目は、ルーキーの川村がプロ初完封。打線が初回から5点を奪って大野をKO。大量援護で余裕を持って投球ができたこともあり、10三振を奪っての7勝目。新人王を争う広島の沢崎、黒田にも劣らない投球を見せた。

敵地で広島をスイープし、今季3度目の5連勝。ヤクルトはまだ9ゲーム差とその背中は見えないが、横浜が2位としてヤクルトを追いかける形ができてきた。

苦手の阪神をハマスタでスイープ

5日からはハマスタに帰って阪神との3連戦。5連勝の勢いで天敵も撃退なるかという試合だった。

初戦は悪天候の中、強行された。先発の三浦が初回に1失点した直後、2アウト満塁のチャンスで谷繁。打ち上げた打球は左中間の浅いフライ。しかし悪天候の中、打球を見失ってポトリと落ち、これが走者一掃の単打という珍しい一打で逆転すると、13安打を浴びせて11点。5回裏に一挙6点を追加し、なおも2アウト満塁という場面で雨天のためコールドゲームとなった。

「今年初めてうちにツキが回ってきた」と大矢監督が言うように、ここまでは相性の悪さから、全てが阪神にいいように回っていた。谷繁が「これで4勝11敗。あと12試合もあるから、まだいける」と言ったように、流れが変わる試合になった。

6日は、ここまで未勝利で5敗の舩木から3回までに3点を先行。先発の福盛が6回を1失点に抑え、関口、五十嵐、佐々木という盤石なリレーでリードを守った。権藤コーチが「恐れを知らぬ若者たちが、次々に勝っている」というように、福盛も7月初めの初勝利から早くも4勝目。チームは投打に勢いが出てきた。

7日は当時苦手にしていた川尻が相手。ヒットエンドラン、盗塁と言った足を絡めての攻撃がハマり、6回にKOした。先発の野村は7回途中まで2失点にまとめて7勝目。この日は8回2アウトから回跨ぎで登板した佐々木が、通算150セーブを達成した。

苦手の阪神もスイープし、10年ぶりの8連勝。1989年からファンとして応援している自分にとっても、初めて経験する大型連勝にテンションは高まる。週末はハマスタで首位ヤクルトを迎え撃つ。期待はかつてないほど高まった。

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首位攻防戦と息巻くも挫折

8連勝の勢いも通じず

6.5ゲームという大きな差があったが、これまで夏場に2位という立場で試合をすることがなかったベイスターズ。これは首位攻防戦なのか?という疑問は持ちつつも、8連勝の勢いで一気に迫ると息巻いていた。

だが、そう甘くはない。8日の初戦はマホームズが先発したが、2回に捕まる。先頭の古田、続いてデータムを歩かせると、池山のタイムリーで先制され、宮本に2点タイムリーを打たれて3失点。しかし、これ以降は立ち直り7回まで投げ切った。

自慢の打線はヤクルト先発の田畑に封じられた。波留、ローズが2本ずつの4安打に終わり、内野ゴロ間に1点を返しただけ。首位ヤクルトの壁にぶち当たり、連勝は8で止まった。

望みを繋ぐためにも連敗は避けたい横浜は、2戦目で戸叶が好投する。5月末からずっと調子を落としていた戸叶が、この大事な試合で7月17日以来の久しぶりの登板となった。立ち上がりから球威、コントロールともに十分で、7回を池山のソロだけに抑える好投。4回にローズのタイムリーと押し出しで挙げた2点を守り、何とかひとつ勝利を掴み取った。

再び勢いに乗りたいところだったが、3戦目は悔しい逆転負けを喫する。ここまで苦手にしていたヤクルトの吉井を攻め、2回までに3点を挙げてKO。4回を終わり4-0とリードし、先発の川村も6三振を奪う順調な展開だった。このカードの勝ち越しが見えてきたところで暗転。急に崩れた川村は5回1アウトも取れずに五十嵐に交代。ここまで好投が続いていた五十嵐も、急遽の登板で勢いが付いた打線を止められず、一気に逆転された。

首位ヤクルトの底力を見せつけられ、首位攻防戦で一気に差をつめると息巻いていたカードは1勝2敗に終わり、挫折を味わった。

しかし、このヤクルト戦は満員の観客が詰めかけ、ハマスタは熱気を帯びていた。読売戦以外で満員となるのは1994年5月7日の阪神戦以来だった。特にこの時代のヤクルト戦は、なかなか座席が埋まらないカードでもあった。「ホームで試合をやっているんだな、とつくづく実感しました」と鈴木尚が語っていたように、選手には確かな力を与えていた。「これが始まりだよ」と大矢監督は言った。

再びの挑戦へ

「再スタートに相応しいゲームだった」と大矢監督が語ったのが、週明け12日の中日戦だった。1-1の6回裏に進藤の2ランなどで3点を勝ち越し、横浜の勝ちパターンに持ち込むというところで、三浦が7回にパウエルの同点3ランを浴びて、計算が崩れる。しかし、その裏すぐにローズがタイムリー二塁打で勝ち越し。島田、佐々木で厳しい試合を逃げ切ってものにした。

苦しい試合を何とかものにしていき、再びヤクルトとの直接対決で勝負するという意気込みが見えた全員野球での勝利だった。19日からの神宮での3連戦で、再び挑戦するために、ナインは一丸となった。

翌日の13日は、先発予定だった福盛が体調不良で回避。前日、練習で114球を投げていたマホームズが急遽、間隔を詰めて先発。試合開始の3時間前に決まった登板で、念願の来日初勝利を挙げた。

そして、静岡草薙球場で行われた14日は、野村が4失点でリードを許す展開だったが、6回に進藤、谷繁、佐伯が3者連続本塁打。一気に逆転して逃げ切った。これで中日戦は8連勝。佐々木は3日連続のセーブを挙げた。

16日からは東京ドームでの2連戦。初戦では、体調不良で登板を回避した福盛が、素晴らしい投球を見せる。斎藤雅との投げ合いで、1-0の緊迫した展開が続く。8回途中まで2安打に封じたが、8回に不運な当たりや守備の乱れもあり、同点とされてしまった。

チームは10回に内野ゴロ間に得点し、しぶとく勝利を挙げ、これで再び4連勝。しかし、ヤクルトも負けずに差は縮まらない。神宮での首位攻防戦に向けて少しでも詰めておきたい横浜だったが、17日は岡島にプロ初完封を許し、連勝は止まった。6.5ゲーム差で神宮決戦に臨むことになった。

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これが首位攻防戦か!

神宮決戦ラウンド1

1997/08/19 18:21 神宮 36,000人 横浜11勝9敗
横  浜 000 102 000 | 3
ヤクルト 110 000 000 | 2
(勝) 戸叶30試合9勝3敗
(S) 佐々木39試合3勝29S
(敗) 山本31試合3勝6敗1S
(本) 土橋6号ソロ(戸叶)、谷繁12号2ラン(山本)

この年、4勝1敗とヤクルトキラーになっていた戸叶を、ローテーションの順番をずらして初戦に投入。2点を先行される苦しい展開にはなったが、逆転で重要な初戦を取った。

2点を先行されたが、4回に自らタイムリーを放ち、味方が逆転する6回途中まで好投を見せた戸叶、そして逆転2ランを放ち、1点のリードをリリーフ陣と守り切った捕手の谷繁。バッテリーの勝利だった。

安定していた関口、島田と繋ぎ、佐々木を8回2アウトから投入する執念の采配も実った。「これでうちらしいゲームができそうだね」と2戦目以降に目を向けた大矢監督。熱い神宮での戦いにより一層注目が集まった。

神宮決戦ラウンド2

1997/08/20 18:20 神宮 36,000 横浜12勝9敗
横  浜 000 400 001 | 5
ヤクルト 000 000 100 | 1
(勝) 三浦19試合6勝3敗
(敗) 川崎18試合6勝4敗
(本) 鈴木尚16号2ラン(川崎)、テータム6号ソロ(三浦)、ローズ15号ソロ(岩崎)

三浦と川崎の先発で始まった第2戦。序盤は0-0の立ち上がりだったが、4回に横浜打線が川崎を捉える。

ランナー1人を置いて、鈴木尚が先制2ラン。これで神宮のレフト、三塁側スタンドのボルテージが上がる。さらに1アウト2、3塁とチャンスを作り、川崎に相性が良いセルビーを代打起用。これが見事に当たってライト線へのタイムリー二塁打。4-0と大きくリードを奪った。

この援護に三浦が応え、7回にソロで1失点したものの、12三振を奪って完投勝利。連戦連投のリリーフ陣を休ませての価値ある勝利だった。ローズのダメ押しのソロも完投を後押ししてくれた。

「こんなに目立てる試合は、なかなかないですからね」と若かりし番長は、当時から目立ちたがり屋だった。三浦らしくコントロールが冴え、見逃し三振を次々に奪った。「プレッシャーはありましたけど、思い切りいきました。気分良かった」と語る三浦に対して、先日亡くなった野村克也監督も「投手のお手本やな」とお手上げのコメントを出していた。

鈴木尚が「やっとヤクルトの尻尾が見えてきましたね」と言った通り、ついに4.5ゲーム差。首位攻防戦と言っても違和感がないくらいにはなってきた。

友人から誘われ、チケットをもらって神宮球場でこの試合を観戦した。あまり行ったことのない神宮球場だったが、首位攻防戦ということもあり、三塁側にたくさんのベイファンがいて、試合展開的にもかなり盛り上がったのを覚えている。

トータルではあまり打っていなかったセルビーも、この試合での貴重なタイムリーが印象的で、活躍した外国人というイメージになっている。

当時観戦した時のチケット

神宮決戦ラウンド3

1997/08/21 18:20 神宮 40,000人 横浜13勝9敗
横  浜 030 000 010 | 4
ヤクルト 000 000 010 | 1
(勝) マホームズ8試合2勝3敗
(S) 佐々木40試合3勝30S
(敗) 石井一12試合6勝4敗
(本) 進藤10号ソロ(野中)

連勝で4.5ゲーム差に迫り、勢いに乗る横浜。ヤクルトの先発は、この年左肩の手術でシーズン中盤から復帰し、既に6勝を挙げている石井一。横浜は、来日初勝利を挙げたばかりのマホームズが先発した。

石井一から得点するのは難しいと思われたが、意外にも早く試合が動く。2回、ヒットに2四球で満塁のチャンスをもらうと、波留が右中間へ走者一掃のタイムリーを放って、3点の先制。思いもよらず一気に得点ができた。

マホームズは6回途中まで8安打を打たれながら、何とかピンチを踏ん張って無失点。6回に1アウト1、2塁のピンチを招いたところで、中継ぎエースの島田が登板。「自分のピッチングを心がけただけ。しんどかったけど、ベストピッチができた」とピンチを断った。チーム97試合目で47試合とほぼ半分に登板している。この日が2回1/3だったように、イニング跨ぎや3イニングの登板もある。彼の存在なくして佐々木へのリレーは成り立たない。

8回に石井琢のエラーが絡んで1点を返されると、五十嵐も投入して、リードを守った。3点差あれば十分の佐々木が最後を締めて、神宮決戦は横浜の3連勝。

ついにゲーム差は3.5となり、いよいよ優勝もあるぞという雰囲気になってきた。これまで、夏場に優勝を意識することなど程遠いシーズンしかなかったから、毎日神奈川新聞で勝敗表を見るのが楽しみになっていた。

チーム勝率
1ヤクルト10259412.590
2横浜9754430.5573.5
3広島9952470.5253.0
4中日10447561.4567.0
5阪神10144561.4401.5
6読売10144570.4360.5

8月後半からヤクルト、横浜という10年前には考えられないような優勝争いが始まった。

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マッチレースでの追走

最接近2.5ゲーム差

ヤクルト戦3連勝の勢いをハマスタに持ち帰り、22日の読売戦では斎藤雅を攻略。鈴木尚の17号ソロなどでリードし、6回1失点の野村への代打セルビーが、5号ソロを放ってリードを広げるという、勝っているチームの流れで主導権を握る。五十嵐が3失点してリードは1点になるが、最終回は佐々木が締めて4連勝。ヤクルトが敗れていよいよ2.5ゲーム差に詰め寄った。

中日戦11連勝で月間19勝の新記録

26日からはナゴヤドームでの中日3連戦。ここまで中日戦8連勝中。ヤクルトとの差を詰めるためにもお得意様には負けられない。

初戦は白熱した投手戦となる。横浜は戸叶、中日は山本昌が先発し、ゼロ行進が続く。戸叶は7回を4安打無失点の投球を見せたが、山本昌はそれを上回り、9回まで2安打に封じ込める。横浜は関口、五十嵐が無失点で抑え、0-0のまま延長戦に突入する。

10回、横浜は谷繁がソロホームランを放ち、ついに1点を先制する。「肩の準備はできていたが、まさかシゲがあそこで打つとは思わなかったから、心の準備ができていなかった」という佐々木が10回裏にピンチを招いたが、連続三振で切り抜け、14試合連続セーブと、当時のプロ野球記録に並んだ。

リリーフ陣をまとも番長が救う。7月にやっと2勝目を挙げた三浦が、8月に入って絶好調。27日の中日戦でも好投を見せた。自己最多タイとなる12三振を奪い、3年ぶりの完封勝利。初回から得点し、7回には一挙5点を奪った打線の大量リードも後押しした。

そして、28日の3戦目も打線が強力に援護。1-1の3回に2点を勝ち越すと、5回に野口を攻略して一気に4点を奪った。先発のマホームズは3失点しながら7回を投げ切り3勝目。9回に島田が2失点すると、佐々木を投入して逃げ切った。佐々木は15試合連続セーブのプロ野球新記録。

そして、中日をまたもスイープし、これでカード11連勝となった。そして8月の19勝目は、球団最多の月間勝利数となった。

ヤクルトも負けない

8月に入り、7月末から続いた8連勝の後、ヤクルト戦での1勝2敗に続いて4連勝→4連勝→4連勝と連敗なく連勝が続いている。

神宮決戦の後、2.5ゲーム差まで詰め寄ったが、ヤクルトも連勝しており、2.5ゲーム差のまま変わらず。両者がピタリと並走する状況が続いた。横浜も背中が見えてから、なかなか近づかないもどかしさがあり、我慢のしどころとなった。

鬼門再び現る

29日からは鬼門の甲子園で3連戦。ハマスタでは3タテした阪神を相手に、直接対決に向けてヤクルトとの差を縮められるかというところ。

初戦は苦手の湯舟にまたしてもやられてしまった。6安打で完封勝利を許した。野村も4回までに4失点でKOされ、鬼門で連勝が止まった。

切り替えたい翌日も打線が沈黙。中込に対して7回まで4安打。伊藤、葛西のリレーに2夜連続の零封負け。自慢の打線が封じられてはどうしようもないが、勝負どころでまたしても阪神に痛い星を落とした。快勝したヤクルトと3.5ゲーム差となり、7試合ぶりにゲーム差が動いた。横浜は6月末以来、約2か月ぶりの連敗となった。

ひとつ勝ってハマスタのヤクルト戦に向かいたい横浜は、31日の阪神戦も苦しい展開が続く。4回にローズのレフト線へのタイムリーで22イニングぶりに得点するも、先発の福盛がすぐさまコールズに6号ソロを浴びて同点。

負けられない横浜は5回から関口、島田、五十嵐と必死の継投。一方、甲子園に来てから沈黙が続く打線も川尻に対して10安打を放つも、あと一本が出ず、1-1のまま延長戦に入る。

10回、ローズがバックスクリーンへの16号ソロを放ち、均衡が破れる。「シングルヒットを狙ったのに入っちゃったね」という一打が値千金の決勝打となり、8月最後に何とか勝利を拾った。息つく暇もなく、ハマスタでのヤクルト2連戦で勝負の9月が幕を開ける。

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佐々木が月間MVPを受賞

1991年7月以来、自身2度目の受賞となった。

8月は14試合に登板して、全ての試合でセーブを記録。20勝6敗と好成績をマークしたチームに大きく貢献した。

また、8月には数々の記録を達成。16試合連続セーブは当時の日本新記録。月間セーブも更新して14とした。当時はセーブと救援勝利を加算したセーブポイントで最優秀救援投手を決定していたが、通算セーブポイントでもセ・リーグ最多となっていた。

投げる度に記録が付いて回った8月を振り返り「いつ何をやったかよく覚えてないんですよね」と笑い、「調子はあまり良くなかったが、チームが調子良かったので、気力で投げました。8月は長く感じた」と素直な感想を口にした。

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8月末の勝敗表

チーム勝率
1ヤクルト11165442.596
2横浜10660460.5663.5
3広島10756510.5234.5
4阪神10949591.4547.5
5中日11349631.4382.0
6読売11047630.4271.0

8月を20勝6敗というハイペースで追い上げた横浜が、貯金を14まで伸ばし、首位ヤクルトへ3.5ゲーム差まで詰めた。広島も貯金5まで上昇し、上位2チームを窺う。7月末時点で2位に10ゲーム差を付け、余裕を持って優勝を決めるかに思われたが、横浜の奇跡的な追い上げで風雲急を告げてきた。

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9月のレビュー

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