横浜DeNAベイスターズは11月30日、外国人選手6名の来季契約について発表した。ウィック、オースティン、ケイ、ジャクソンとは2025年シーズンにおいて選手契約を結ぶことになったが、ウェンデルケンとフォードには2025年シーズンの契約を結ばない旨を通知した。12月初めに公示される契約保留選手名簿への期限を前に、全員の去就が正式発表という形になった。
オースティンは約5億円で延長
残留の決まった4選手の推定年俸は以下の通り。(1ドル150円で換算)
オースティン 330万ドル(4億9500万円)
ジャクソン 158万2千ドル(2億3730万円)
ケイ 100万ドル(1億5000万円)
ウィック 95万ドル(1億4250万円)
オースティンについては、過去の記事でも記載した通り、2022年から2024年までの3年契約で、2025年は球団がオプションを持っていると言われていた。
今回は、1年契約との報道なので、球団のオプションを選択したものと思われる。日刊スポーツの2024年の選手名鑑でもオースティンの年俸は4億3,500万円となっていたが、3年契約を結んだ2021年末とはドル円のレートも異なる。どのように支払うかによって球団の負担は異なるだろうが、2024年で既にそれくらいの額を払っていたのだとしたら、首位打者を獲得して日本一にもなったシーズンで、球団オプションによって年俸アップを抑えられたという可能性もある。
現状のNPBでは、オースティンのようなレベルの野手を獲得することは極めて困難。加えて、MLBからのオファーがありそうなレベルの選手ともなれば、10億円前後の年俸になってもおかしくはない。昨年のバウアーやソフトバンクのオスナ、今オフ注目されるマルティネスがそれに当たる。そう考えれば、ケガのリスクは高いものの、オースティンくらいのレベルで5億円というのは異常に高いというわけではない。
フォードは退団ということになったので、オースティンが来季も年間を通して1軍でプレーし続けることはチームにとっては最重要課題になって来る。実力は心配ないが、ケガで長期離脱となると、その後の契約延長も難しくなってくるので、来季もグラウンドで姿を見せ続けてくれることを祈っている。
シーズン序盤は苦労したが、バウアーに話を聞くなどNPBへの対策を行い、6月以降は安定してローテーションを守った。8勝ながら規定投球回数にも到達したジャクソンは、100万ドルから大幅増となった。東に次ぐ右のエースとして、絶対に必要な存在なだけに残留には安堵した。
まだ28歳という若い右腕は、日本での生活も気に入ってくれている様子で、初めて経験するビールかけ、胴上げにも積極的に参加していた。この1年で先発投手としてもさらに成長したと思う。日本シリーズは、2024年の集大成として素晴らしい投球を見せてくれた。2年目はまた違った難しさがあると思うが、彼の能力ならば期待に応えてくれると思う。12勝6敗くらいの成績で、リーグ優勝に導いて欲しい。
そして、個人的には一番残ってもらいたかったウィックも残留が決まった。80万ドルから年俸アップで2年目を迎える。1年目は開幕1軍には入ったものの打ち込まれ、4月10日に早々のファーム行き。ファームで再調整し、札幌から1軍に再合流。エスコンの初戦で、延長10回1点リードで登板となり、どよめきが起こったが、速球で抑え来日初セーブ。
150キロ台中盤の速球だけでなく、カーブが良くなり緩急を使えるようになった。カットボールも決まり出し、少しずつブルペンでの存在感が大きくなった。8月27日は、3点リードの勝ちパターンで使われるもノーアウト満塁のピンチを招き、三浦監督が交代を告げた。マウンド上で拒否の姿勢を見せたウィックは三浦監督に「CHANGE!」と一喝された。
9月27日に右脇腹の肉離れで登録抹消。回復を待ったが、CSと日本シリーズでは登板できなかった。43試合登板で防御率2.60、5勝1敗11ホールド1セーブ。2025年はブルペンの中心として支えて欲しい投手。CHANGEの件もそうだが変わり者な面もあり、いろいろな意味で楽しみな選手。
先発投手になりたいという思いで来日したケイは、6勝9敗と苦労した。開幕ローテーションは外れたが、2巡目で好投を見せると6月は防御率1.00の好成績。しかし、8月と9月はマウンド上で苛立つ姿を再三見せ、振るわなかった。
しかし、CSではファイナルステージの初戦で6回無失点の好投。日本シリーズでもソフトバンク打線を7回無失点に抑え、日本一に貢献した。次の3月で30歳というケイは、先発投手としてはまだまだ成長する余地はある。ポストシーズンの好投は決め手になったと思うが、もともと契約延長を考えていたと思う。2024年の1年間の先発投手としての経験を踏まえ、2025年は勝敗を逆にする活躍を期待したい。
既にディアスは残留が発表されており、マルセリーノも育成契約で延長ということになった。モロンとマルティネスの育成2投手は既に退団が決定しており、これで外国人選手は全員の去就が正式に発表された。
球団は特に2025年シーズンのリーグ優勝を重視している。2024年は3位に終わりながらも日本一を達成し、残るはそこだけになっているし、この機運が高まったところで一気に登り詰めたいという思いもあるだろう。継続的な強さを重視したチーム作りを進めて来たが、今オフに限っては来季の優勝へ全振り。4名の外国人選手の1年契約による延長も、それを示している。
ウェンデルケンと契約延長せず、やはり噂されるあのクローザーを獲りに行くのか。12月に入って自由契約となるが、キューバとの交渉もあるのですぐに決まることはないだろう。ここがどういった方向へ進むのか見守りたいと思う。バウアーの再契約を検討していることも一部で報じられたが、こちらは少し懐疑的な目で見ている。ジャクソンとケイの残留は決まったが、2025年のリーグ優勝を狙うなら、もちろん欲しい戦力ではあるだろう。バウアーもMLB復帰を簡単には諦められないだろうから、こちらはひとまずないものと思っている。
ケガによる離脱響いたJB
ウェンデルケンの退団は、非常に残念。多くのファンがその思いだろう。家族も日本での生活を楽しんでいたし、愛娘のアスペンちゃんもYou Tubeやハマスタで愛らしい姿を見せてくれていた。
2024年は、開幕戦で3者連続三振を奪い、大和の犠牲フライで勝ち越して勝利投手となった。ヒーローインタビューにも上がり、最高のスタートを切った。しかし、4月12日に右肘の炎症で登録抹消となった。山崎、伊勢もファームで再調整となり、勝ちパターンが苦しくなる中でウェンデルケンの不在は大きく響いた。
炎症という発表だったが、1ヶ月を過ぎてもなかなか実戦登板がなく、心配された。個人的には手術に踏み切るレベルなのかと思っていた。オールスター前にようやくファームで復帰。自責は0だが5失点する登板もあり、3試合を投げただけで7月30日に1軍へ復帰。
8月は12試合で防御率0.79、9ホールドとチームに貢献。ウェンデルケンの存在でリリーフが立ち直り、Aクラス争いに踏みとどまった。9月はコントロールを乱す試合が目に付き、10月2日にはCSに向けてコンディションを整えるために登録抹消となった。
CS、日本シリーズではブルペンに入り、5試合で登板したが、勝ちパターンでの起用ではなかった。CSはファーストステージの2戦目で失点したが、ファイナルステージでは3連投もこなした。日本シリーズでは福岡での1試合だけの登板だったが、1イニングを三者凡退で抑え、2つの三振を奪った。
故障による3ヶ月強の離脱は本人にとってもチームにとっても痛かった。そして、その影響があるのかどうか分からないが、2023年のようなボールではなかったように思う。それでもチェンジアップを低めに決め、テクニックできっちりと結果は残した。
1年目は61試合で防御率1.66、33ホールドと素晴らしい成績を残した。話題性ではバウアーに隠れていたが、さすがメジャーリーガーという投球を見せてくれた。次の3月で32歳とまだまだ全盛期といった感じだが、故障の影響や他の選手との兼ね合いで契約更新をしないことになった。
JBはXで、球団から発表される前に「この旅は予期せぬ終わりを迎えましたが、次を楽しみにしています」と退団を示唆するとともにファンへの感謝を伝えた。ベイスターズファンとしてもJBの貢献には非常に感謝しているし、できることなら来季も観たかった。最終的にどんな陣容となるか分からないが、球団のこの決断が良い方向へ行くことを願いたい。NPBでの移籍もありうるとは思うが、パットンやエスコバーのように今後もベイスターズとの縁が繋がると良い。
そして、7月に来日し、1軍では6試合出場に終わったフォードも契約延長とはならなかった。オースティンがファーストにいる状況で、ファースト専門の野手を獲得。ケガによる離脱が多いオースティンのバックアップと考えられていた。
オールスターでイレギュラーした打球が顔面に当たるアクシデントで、オースティンがオールスター明けから脳震盪特例で登録抹消となり欠場。フォードがその間にファーストへ入った。20打数4安打の打率.200ではあったが、ライトスタンドへのホームランを放つなどOPSは.623をマークした。チームが9連敗中で、1つも勝てなかったのは残念だった。
ファームでは、41試合に出場。打率は.211と高くなかったが、8本塁打を放ち、OPSは.709をマークした。チームとして初めて出場したファーム日本選手権では2本塁打を放ち、ファーム日本一に貢献。CSではウィックの離脱もあって出場選手登録され、ファーストステージ第2戦ではホームランを放った。
ファイナルステージ第6戦では貴重な同点タイムリーを放ち、日本シリーズ進出にも貢献。日本シリーズは初戦で代打として打席に立ち、有原からあわやホームランという鋭いファウルを放った。福岡では代打でヒットを放ち、第4戦ではファーストでスタメン出場した。
結果的にファームも1軍も日本一に導いた形になった。オースティンが残留し、来季もバックアップという形での契約延長は難しかった。ベイスターズとしても、以前から注目していたということなので、苦渋の決断だろう。DHが採用されればというところだが、来季もその予定はない。選球眼が良く、左腕もそれほど苦にしない。打率は高くないがOPSは稼げる選手。ファームが中心ではあったがNPBの野球にも慣れて来ている。他チームから声がかかってもおかしくない。
ファーストの守備は上手いとは言えないし、年間を通してと考えるとDHのあるパ・リーグならという感じではあるだろう。日本ハムの新庄監督も評価するコメントを残していたが、野手を獲得するチーム状況ではないようだ。勝手な話ではあるが、セ・リーグで敵として戦いたくないが、ソトのようにパ・リーグで見られたらと思う。
26年ぶりの日本一に貢献してくれた、ウェンデルケンとフォードが新天地で活躍することを願いたい。
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