横浜DeNAベイスターズは12月23日、濵口遥大投手とソフトバンクの三森大貴内野手のトレードを発表した。来季は中継ぎへの転向を志願し、メキシコのウィンターリーグに派遣されていた濵口だが、現役ドラフトの上茶谷に続きドラフト1位の投手がソフトバンクへ移籍する形になった。
2017年日本シリーズでの快投
2016年にドラフト1位指名を受け、地元の神奈川大から入団。柳、佐々木千隼が抽選で外れ、いわゆる「外れ外れ1位」だったこともあり、多くは期待されていなかったが、ルーキーイヤーから魔球チェンジアップを武器にローテーション入り。規定投球回数には達しなかったが、10勝を挙げた。CSでも活躍し、日本シリーズでは3連敗で迎えた第4戦で先発。8回途中までソフトバンク打線をノーヒットに抑える快投を見せた。
2年目以降、年間を通して先発に定着することはできず、勝利数とイニング数はともにルーキーイヤーが最多。1軍では135試合中132試合が先発で、44勝46敗。スタミナは十分だが、ボールが先行して球数が嵩み、5回で100球というのも珍しくなかった。本人も変化の必要性を感じており、ファームで手応えがあり、CSと日本シリーズでも務めた中継ぎへの転向を志願した。
メキシコのウィンターリーグにも派遣され、来季こそチームに貢献したいという思いで取り組んでいる中で、本人も驚くトレードとなった。偶然だが同じくメキシコでプレーしていた上茶谷とともに、2025年はソフトバンクでプレーすることとなった。
ソフトバンクも2017年日本シリーズの印象は強いと思うし、それ以降も交流戦では非常に相性が良かったのも事実。今年の日本シリーズでは第6戦で流れを引き寄せる好投を見せた。パ・リーグ向きとも思えるし、チェンジアップは慣れないとなかなか打てないだろう。
個人的には、母校の神奈川大からベイスターズに入って来た初めての選手だったので、非常に思い入れがある。まだ新人合同自主トレが長浦で行われていた時代で、観に行った時には多くのファンがサインをもらえていた。濵口と細川を目当てに行き、二人とももらえて喜んだ覚えがある。濵口は一人一人、目を見て挨拶していたので好感を持った。
神大からは梶原も入って来たが、濵口がベイスターズで見られなくなるのは残念。背番号26のビジターユニフォームを着て、ハマスタでの7回2/3ノーヒットの快投を観られたことは良い思い出。濵口にとっては、地元の佐賀に近い球団でも活躍を見せられるチャンスでもある。競争は厳しいが、左腕は重宝されるはずなので1軍に定着し、交流戦で姿を見せて欲しい。2025年もまた日本シリーズで対決できたら良いと思う。
11月に右手人差し指の手術を受けたばかり
セカンドやショートを守れるタイプの右投左打の内野手は、林、森敬、柴田、石上、京田と揃っている。ドラフトで加藤響を指名したが、どちらかと言うと右打の方が薄いのかなと思っていた。そこへ右投左打の三森を獲得した。
三森は、埼玉県出身。中学の時点で埼玉を離れ、青森山田へ進学。そのまま高校に進み、今年ベイスターズに移籍して来た堀岡が同級生にいて、ともに甲子園を目指した。センバツには出場したが、夏の甲子園には出場できず。濵口と同じ2016年のドラフトで、ソフトバンクから4位指名を受けてプロ入り。
3年目の2019年に1軍デビュー。2020年も24試合に出場した。2021年に86試合で345打席に立ち、セカンドでのスタメン出場が大幅に増えた。2022年は102試合で437打席とレギュラーに定着。プロ初ホームランを放つと、9本塁打とパンチ力も見せた。2023年はやや出場機会が減ったが、内野のレギュラー候補として順調に成長。
2024年は、開幕直後に右手人差し指を骨折して離脱。4月末に復帰するも、交流戦で再び右手人差し指を痛め、右示指末節骨関節内脱臼骨折で再び離脱。6月3日に右示指関節内骨折観血的手術を受けている。復帰後は外野手として準備したが、1軍に戻ることなくシーズンを終えた。
11月6日に右示指骨内異物除去術および観血的関節受動術を受けたことが発表されており、全治1~2ヶ月となっている。このあたりは、ケガの経過も確認した上での獲得になっているとは思うが、スローイングも含め守備面の影響がどうなのかは懸念される。
186cmと大型の内野手だが、走攻守の三拍子が揃っている。2022年に9本塁打をマークしたパンチ力もありながら、2022年の20盗塁を中心に通算56盗塁の走力も併せ持つ。守備は1軍では、ほとんどセカンドだが、外野も守ることができる。最多の93試合に出場した2022年のセカンドでの守備率は.991、UZRは10.9をマークし、安定した守備も見せている。
ベイスターズにも、林、森敬、石上といった俊足の選手がいるが、まだ1軍で盗塁を積み重ねられるような技術はない。そうした意味で、既に56盗塁をマークする実績があり、成功率も非常に高い内野手が加わる意味は大きい。
ただ、守備位置はほぼセカンドで、オプションとして外野が考えられるといった状況。セカンドには現状、牧がいるが体への負担やセンターラインとしての守備力を考えると、いずれコンバートも視野に入れる必要があると考えられる。
ファーストのオースティンは2025年も残留が決まっている。2024年は肉離れで1ヶ月程度の離脱はあったが、ギリギリながら初めて規定打席に到達し、首位打者を獲得した。期待はするものの1年間ずっといてくれるかというと、難しい面はある。さらに、まだまだレギュラーの力は持っているものの、サードの宮崎も大和の退団でチーム最年長となり、常時スタメンで出場し続けることは難しくなって来る。高いパフォーマンスを維持するためにも休みながら出場するようになるだろう。
今すぐに牧のサードを考えるかどうかはチーム方針にもよるが、牧が状況によってファーストに入ることは十分に考えられる。侍ジャパンではファーストの守備に入り、好守も見せていた。打力のある牧をセカンドで使える点はストロングポイントではあるが、守り勝つという意味ではUZRが-10.5に終わった点は課題。セカンドベース方向ではファインプレーを何度も見せたが、一二塁間の打球に弱さがあった。
オースティンを終盤に交代させる際は、佐野をファーストに持って来るパターンが多かったが、牧の負荷軽減も考え、牧をファーストに移して三森をセカンドに入れるオプションも考えられるようになる。林や石上、知野らの成長も期待したいが、現状だと彼らに交代すると大きく見劣りしてしまう部分が解消される。
オースティンが離脱した際も、三森をセカンドのスタメンで使って走力を生かすオーダーも考えることができる。宮崎が休みの日に、三森がサードに入ることができれば、パンチ力を生かしたバッティングにも期待ができる。
内野のオプションが充実
オースティンが不在となった場合のオプションは以下のようなオーダーが考えられる。
8 梶原/桑原
4 三森
7 筒香/佐野
3 牧
5 宮崎
9 度会
2 山本
6 森敬/林
P
宮崎をベンチスタートにする場合は、サードに三森を入れることも考えられる。
8 梶原/桑原
5 三森
4 牧
3 オースティン
7 筒香/佐野
2 山本
9 度会
6 森敬/林
P
現状のベイスターズで考えれば、外野手の層は厚いので、外野に入ることは緊急事態のオプションくらいになるだろうから、春季キャンプでは右手人差し指の状況を確認しつつ、サードからのスローイングを見たいところ。
前述の通り、堀岡とは青森山田高での同級生。早生まれで1999年2月21日生まれだが、牧と同じ1998年世代の一人。ソフトバンクでは同じドラフトの3位で指名された九鬼もDeNAに移籍しており、溶け込みやすい環境ではないかと思う。
細川、石川は放出してしまっているが、この1998年世代を中心としたチーム作りというのは意識していると思う。そうした中で、高卒9年目だがこれから26歳を迎える、まだまだ若い有力な内野手の獲得は今後が楽しみ。
現役ドラフトでも1軍での実績が豊富な選手が意外と動いた印象だが、最近のトレードだとお互いにこれだけ実績のある選手となることは少ない印象なので、このトレードがチームにどんな影響をもたらすか注目したい。
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