横浜とソフトバンクは5日、多村仁外野手と寺原隼人投手の交換トレードに合意したと発表した。投手陣の強化が課題の中で、さらに門倉の退団が濃厚となり、先発投手の補強を目指していた横浜が、主力選手のトレードに踏み切った。ソフトバンクも外野手が手薄で、ズレータの退団もありうることから、打線を強化する狙いがあり、互いの思惑が一致した。横浜ファンからは否定的な意見の多い、大型トレード。結果はいかに?
体に問題点多く球団もついに決断
うーん、ついに現実になってしまいましたか。
多村放出はあるのか?で、トレードはないんじゃない?と書いてからちょうど1週間。多村の放出は仕方ないと思う。ただ、ファンも多いし、地元選手ということで表面的な痛手は大きい。寺原にかかる期待は相当なものになると思う。
気に入らないのは、交換要員が寺原一人ということ。小椋や篠原といった左腕をセットで獲得できなかったものか。ちょっと交渉がヘタかな。最悪金銭は獲得しないと。
多村はやはり計算できないというのが最大の難点か。このトレードに関して、大矢監督のコメントからすると、フロント主導のようだ。大矢監督が就任時に掲げた「常時Aクラスにいられるチームを作りたい」というものに対しては、多村を主軸としたチーム作りでは達成しえないと判断したのだろう。主軸が試合に出たり出なかったりでは、安定したチームにはなれない。
また、単に「痛みに弱い」という話ではなく、多村の体には問題点が多い。
- 1997年に痛めた右肩(ボルトが入っている)
- 昨年の交通事故による視力の問題
- 今年のホームクロスプレーで痛めた左手薬指
- 腰のヘルニア
- 首の骨のズレ
1.と5.は関連があり、今でも帰塁の時に首や肩を痛めて数試合欠場することがある。2.は、ほぼ戻っているとは思うが(WBCはこの事故の後なので)、3.については、肋骨の骨折よりもこっちの方が深刻だったという。ヘルニアについては、11月にブロック注射を受けた結果、手術は必要なくなった。ヘルニアに関する知識は全くないのだが、それは根本解決でない?
これだけの問題を抱えながらよくやっているとは思う。逆に言えば、そんなに痛みに弱いわけではないのかも知れない。体がボロボロの状態で、すぐに悲鳴をあげてしまっている。
特に心配なのは、WBCを除けば、公式戦で「これぞ多村」という打撃を見たのは、2005年6月の交通事故の前が最後ということだ。
能力は凄いがあまりにも欠場が多く
あの時までの多村は凄かった。交流戦で大爆発し、6/15で21本塁打。このまま行けば50本も、という感じだった。しかし、リーグ戦に戻る直前、靴ひもを結ぶ際に腰を痛め(これがヘルニアだったのだろう)、2軍落ち。さらに練習で横須賀に向かう途中で、交通事故を起こす。
7/29に復帰したが、その後は打率を大きく落とし、ホームランも何とか31本。明らかに事故で左目を強打した影響があった。
それでも、WBCでは日本選手トップの3本塁打を放ち、まずまずの活躍を見せた。だが、ペナントレースが開幕して1週間余りで、左耳に腫れ物が出来て、早くも欠場。さらに、広島球場では練習中にファールを放った際に左脇腹を痛め、長期欠場となる。
5/19に復帰して、ここから4試合連続本塁打。6/2には吉村とともに2本塁打。(このあたりが強いていえば多村らしいかも)
だが、6/3にはセンターの守備でライナーを取りに行って足を捻挫。この捻挫から復帰した6/7の1打席目で2ベースを放ち、ホームへ突入して肋骨を骨折。
8/18に復帰し、多村自身が招待した視覚障害者の前でヒーローインタビューを受けるも、その後は本来のバッティングから程遠く、トレーニングの為に湘南へ。そのままシーズンが終了。
振り返ってみると、多村がレギュラーとして活躍したのは、2005年の6月中旬までで、その後は続けて試合に出ることすらままならない。
試合に万全で出れさえすれば、もの凄い選手であるのは、誰もが認めるところ。他球団のファンからしたら、多村の評価は高い。しかし、ベイファンにとってみれば、凄い選手だけにいなくなった時の落胆は大きい。この2年で何度味わったのだろう、「また多村の名前がスタメンにない・・・」という瞬間を。
ソフトバンクはコンディショニングの施設等が充実していて、ドラフト候補生にも人気があると聞く。だから、もしかしたら多村もソフトバンクで万全な体を作り、「本来の実力」を発揮するかもしれない。しかし、このまま横浜にいても結局1年間フルに出場することはなさそうだ。
余計な心配かもしれないが、横浜から出された多村が、活躍出来なかった場合、2~3年で解雇されてしまうかも知れない。これは心配し過ぎか?横浜としても、あと3年程度でFA権を得る多村にこれ以上の期待はできないと判断したのかも知れない。
寺原がローテの柱になってこそ成功
代わって横浜に来る寺原。高校時代がピークだったと言われる。横浜もドラフトで指名し、ダイエー(当時)、巨人、中日と4球団が競合の上、抽選で逃している。ソフトバンクの厚い投手陣では、先発5番手~6番手であるが、横浜に来れば、多村と交換した以上は、先発の柱として期待される。甲子園の大舞台で最高の投球をしていただけに、期待されれば逆に力を出してくれるのでは、という妄想をしてしまう。
ソフトバンクのエース、斉藤和巳も1995年に南京都高からドラフト1位で入団したが、2000年にやっと初勝利を含む5勝を挙げ、2002年の4勝と併せても入団7年で9勝だった。しかし、この4年で64勝。ケガがちだった斉藤和と寺原は違うものの、これだけ大化けすることもある。もちろん、投手育成能力が低いと言われる横浜が同じようなことを簡単に出来るとは思っていないが。
主力の多村を出す以上、完成された主力投手を交換要員にすべきだったが、なかなか折り合わなかったのだろう、育成過程の寺原を獲得することになった。これは大きなリスクを背負っている。このトレードの成否は間違いなく寺原が握っている。寺原がベイスターズのローテーションの柱になれれば、横浜にとって有意義なトレードと言える。
トレード通告の直後ながら、「横浜で頑張りたい」という寺原が、ソフトバンクを見返し、横浜の期待に応える為に成長することを願いたい。決まってしまったことは仕方ない。影ながら多村も応援していきたいとは思う。(当然、横浜戦以外は)
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