NPBは12月9日に現役ドラフトを実施し、13人の移籍を発表した。3年目を迎える現役ドラフトで、初めて2巡目の指名があった。ベイスターズは、阪神の浜地を獲得。一方、上茶谷がソフトバンクへ移籍することになった。上茶谷に加え、広島の矢崎、読売の畠、西武の本田など1軍でも実績のある選手の名前が並び、現役ドラフトによる選手の移籍が活発化して来た印象。
指名順は非公表だが上位勢が先か
現役ドラフトは、各チームが事前にリストアップした2名以上の選手に対して、1名だけを投票する。獲得票が一番多かったチームが最初に指名することができ、その後は指名された選手の所属チームが順番に指名して行く形。既に所属選手が指名されたチームに当たった場合は、まだ指名していないチームの中で最も事前の獲得票が多かったチームから再開する。ただし、票数が並んだ場合はドラフト会議でのウェイバー順となる。
指名結果を見ると、2つのグループに分かれていたと予想できる。指名順は非公表なので不明だが、おそらくDeNAが含まれるグループが先に指名を行ったと見られる。
指名球団 | 選手名 | 守備位置 | 現所属球団 |
ソフトバンク | 上茶谷 大河 | 投手 | DeNA |
DeNA | 浜地 真澄 | 投手 | 阪神 |
阪神 | 畠 世周 | 投手 | 読売 |
読売 | 田中 瑛斗 | 投手 | 日本ハム |
日本ハム | 吉田 賢吾 | 捕手 | ソフトバンク |
事前の指名でどのチームが最多得票を獲得したのか、これは予想が難しい。唯一、2巡目の指名があり2選手が移籍することになった日本ハムを除き、発表されたのは1選手の移籍だけ。他にリストアップされていた選手が明らかになることはない。事前の投票は、リストアップされていた選手が全て対象となっているので、最終的に指名された選手以外に投票していたというケースもありうる。
リストアップの全貌が分からないので、結局は指名された選手から想像する程度しかできない。上茶谷は人気を集めそうな気はするが、DeNAから始まったとすると、上茶谷が5番目の指名となる。阪神と読売は同リーグで良くも悪くも彼を知っていることと日本ハムは野手を狙っていたとすればなくもないが、吉田以外の選手も含めてソフトバンクが最多得票だったのではないかと予想。
ソフトバンクに戻ったところで、1グループ目は5チームの指名で終わる形になる。奇しくもセ・リーグは2024年の上位3チーム、パ・リーグも上位2チームとなった。
既に指名を終えた5チームを除く7チームのうち、事前の投票で最も票数を獲得したチームから再開することになるが、この予想は難しい。票数が並んでいる場合は、ウェイバー順となる。
指名球団 | 選手名 | 守備位置 | 現所属球団 |
ヤクルト | 矢崎 拓也 | 投手 | 広島 |
広島 | 山足 達也 | 内野手 | オリックス |
オリックス | 本田 圭佑 | 投手 | 西武 |
西武 | 平沢 大河 | 内野手 | ロッテ |
ロッテ | 石垣 雅海 | 内野手 | 中日 |
中日 | 伊藤 茉央 | 投手 | 楽天 |
楽天 | 柴田 大地 | 投手 | ヤクルト |
2024年は最下位に終わった西武、中日から始まったのではないかという予想が多いが、サプライズとも言える矢崎がそこまで遅い順番で指名されるのかなという気もする。
各チームの補強ポイント、年齢構成、選手のタイプなどいろいろな要素があるので、必ずしも一般的に評価される選手を指名するとは限らない。現に、1グループ目と予想した5チームは、矢崎を指名していないことになる。先日の契約更改でダウンしたとは言え、推定4800万円の年俸は現役ドラフトの選手としては高めであることもネックになりうる。広島が早めの指名順だとすれば山足を指名するのも疑問ではある。
事前に予想された選手がほとんどという印象ではあるが、上茶谷は全くの想定外。彼を出して指名順を高め、手薄なリリーフを補強する狙いがあったのかも知れない。そして、前述の矢崎もまさかという感じではあった。
大竹、水谷と現役ドラフトで移籍した選手が続けて大活躍しているソフトバンクは、吉田が指名された。ファームでは3割超えの数字を残しているが、1軍に定着できていない。捕手としての出場は少なく、打力を生かしてのDH、ファーストになりそう。ドラフト時から地元の選手として注目しているが、日本ハムで水谷に続いて活躍となるかどうか。
初年度の大竹、細川に続き、2年目も水谷を筆頭に佐々木千隼も活躍。1年で戦力外となってしまうケースも出ているが、制度として定着しつつある。3年やってみて考えるということで始まったが、レギュレーションの変更はあっても継続されるのではないか。3年目の現役ドラフトからもチャンスを掴み取る選手が出て来て欲しい。
来季ローテ期待の上茶谷は想定外
応援して来た選手が移籍するのは寂しいことだが、上茶谷はプレーはもちろん、それ以外でもファンを喜ばせて来てくれて、親しみや思い入れのある選手なのでショックはあった。2023年はリリーフとして1軍に定着し、ロングリリーフに始まって火消し役、勝ちパターンなどジョーカーとしてブルペンを支えた。
2024年も継続して活躍を期待されたが、開幕から本来の投球ができず4月29日に登録抹消。ファームで1ヶ月ほど調整し、5月26日に1軍復帰。しかし、6月7日のソフトバンク戦で打席に入り、ライト前へ運ぶもライトゴロ。一塁へ駆け込んだ際に転倒。左足首の捻挫で再び登録抹消となった。
その後は、なかなか状態が上がって来ず、1軍復帰は9月16日と3ヶ月を要した。シーズン終盤も前年のような安定感はなく、結局18試合登板で防御率4.37に終わった。CSではベンチ入りしたが、ファーストステージの第2戦で、9回裏の1イニングを投げ1失点。その後、登録抹消となりシーズンを終えた。
日本シリーズの出場資格者から漏れ、オフはメキシコのウィンターリーグへ派遣されることが決まった。11月1日に1300万円減の3800万円で契約更改。2025年は先発への再転向に意欲を見せた。メキシコでも先発投手として結果を残し、来季のローテーション入りが期待されていた中での移籍となった。
エース東にジャクソンとケイが残留、来年こそ復活して欲しい大貫に加え、今年台頭した石田裕、吉野らの若手に加え、上茶谷もローテーション争いに加わって欲しいと思っていたので、現役ドラフトの対象としてリストアップされるとは全く思っていなかった。
少し前の記事でもウィンターリーグに派遣されているとしても、現役ドラフトの対象外になるとは限らないと書いたが、さすがに上茶谷は想定していなかった。ドラフト1位なのにという声もあるかも知れないが、入った順位よりもこれからどういう風に戦力になってもらうかの話。
ただ、上茶谷は2024年はケガもあって不本意な成績に終わったが、決して出番に恵まれていない選手とも思えないし、1軍で通用する力は見せている。現役ドラフトの趣旨も考えると彼にするのは理解に苦しむ部分はある。前述のように、早めの指名順位を取りたいという意図もあるだろうが、レギュレーションの性格上、必ずしも早く指名できるとも限らず、上茶谷を出すほどなのかという思いはある。
ただ、決まってしまったことなので、上茶谷のソフトバンクでの活躍を祈るしかない。これまで試合以外でも楽しませてくれた選手なので、ここからさらに活躍して交流戦や日本シリーズで対戦できればと思う。森唯とこういう形で入れ替わるとは思わなかったが、嶺井もいるし、上茶谷のキャラならどこでも馴染めるだろう。マダックスを達成できるほどの投手なので、ソフトバンクの強力な投手陣の中に食い込んで欲しい。
1998年世代の浜地でリリーフに厚み
上茶谷を出したこともあり、おそらく早めの指名順をゲットしたと思われるが、指名したのは阪神の浜地だった。2022年に52試合登板、防御率1.14で21ホールドという素晴らしい数字をマーク。阪神の勝ちパターンを任される投手に成長した。
しかし、2023年は故障もあり30試合で6ホールド、防御率は5.86と悪化した。2024年も1軍と2軍を行き来する形となり、18試合の登板に留まり、防御率は2.11もホールドなしに終わった。2軍では17試合16.1イニングで失点は3、防御率1.65と数字は残している。
左右は異なるが桐敷、富田、島本に加えてゲラ、石井、さらに漆原、岡留らの競争に敗れ、入り込む余地がなくなってしまった感じがある。そういった背景からの現役ドラフトでの移籍。2023年は51試合に登板して16ホールドの加治屋も戦力外になっているので、分厚い布陣になっている。
これから来る選手なのに申し訳ないが、ベイスターズ戦で見た個人的な印象だと、本当に重要な場面では今一つ頼り切れないイメージがある。素晴らしいボールを投げるが、脆さもあって行けるのではないかと思ってしまう投手。
とは言え、レギュラーシーズンの序盤ではかなり苦しかったベイスターズのリリーフ陣に入っても、実績やボールの質は標準以上。ウェンデルケンが退団となった分を埋められる投手ではある。年齢的にもまだ伸びしろも期待できる。
高卒で入団しているので、来季9年目だが1998年生まれで牧らと同世代。ブルペンということを考えると、来季の復活を期待したい入江、今年リリーフとしてキッカケを掴んだ京山、移籍した大活躍の中川颯、CSで手応えを得た堀岡と同じ歳の投手が揃う。そして、レギュラーキャッチャーとして期待される山本が彼らを引っ張る。
石川、細川は移籍してしまったが、牧がキャプテンを務めたあたりで、1998年以来のリーグ優勝はこの1998年生まれの選手たちを軸にしようという球団の意図を感じられる。タイミング良く獲得できる選手が現れてくれたというのもあるが、この年代を軸にして周りを固めるというのが陣容の考え方になっていそうだ。
また一人、強力な選手が加入した。福岡大大濠高時代には1学年上だった坂本もブルペンにおり、入って来やすいチームだと思うので、早期に溶け込んでくれると思う。上茶谷がいなくなってしまうのはツラいが、この現役ドラフトが成功したと言えるように、浜地にはリリーフとしての貢献を期待したい。
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