06/09 横浜DeNA8-5福岡ソフトバンク(ハマスタ)
ベイスターズファン兼選手の石田裕がプロ初登板。初回、満塁のピンチを切り抜けると、中大の先輩である牧がグランドスラムで強力に援護。4回に内野ゴロ間に1点を失うも、5回を投げ切って勝利投手の権利を得る。井上が同期を後押しするタイムリー二塁打で追加点。2点差に迫られた7回には、筒香がNPB1000安打となる3ランで突き放す。最後は森原が締め、石田裕がプロ初登板初勝利。
ポジ [Good]
ドラフト5位ルーキーの石田裕がプロ初登板。この2試合、先輩たちが打ち込まれているのを目の当たりにしたソフトバンク打線が相手。ビビっても不思議はなかった。だが、それよりも石田裕の表情からは、憧れのマウンドに上がった喜びの方が大きく感じられた。
少年時代、父親から野球を始めるならベイスターズファンになることが条件と言われ、いわゆる暗黒時代から応援し続けた。昨年のドラフトでベイスターズから指名され、夢見ていた自分がベイスターズを勝たせることを実現する舞台になった。そして、まさにこの日、それが現実になった。
緊張していたという立ち上がりだが、出塁されると気を遣わなければならない周東にストライクを投げ込み、インサイドのストレートで見逃し三振。続く今宮はアウトサイドのスライダーで空振り三振。
2者連続三振の立ち上がりも、ここからソフトバンクのクリーンアップは甘くない。栗原にストレートをライト前へ弾き返され、プロ初の被安打。山川はアウトサイドのスライダーを拾われ、連打。小さいころから観ていた憧れの横浜高OB・近藤には勝負し切れず歩かせた。
2アウト満塁という大きなピンチだったが、2日連続3安打猛打賞の柳町を、アウトサイドのフォークで引っ掛けさせ、ファーストゴロに取った。ここを切り抜け、牧のグランドスラムで4点の援護を得たことで乗って行けた。
2回は2アウト2塁から周東の左中間への打球に筒香がダイビングキャッチを見せた。抜ければ確実に1点、周東は三塁へという状況になるだけに、大きなプレーだった。3回は三者凡退だったが、4回、5回はランナーを出しながらも後続を断った。
5回66球だったが、当初の予定通り交代した。その後、2点差に迫られる場面もあったが、筒香の3ランで突き放し、石田裕にプロ初勝利が付いた。大のベイスターズファンという父親は残念ながら来場できなかったということだが、次は父の前で勝つことを誓った。
ファームで結果を残していたので、ここで一度、1軍で試す意味で先発の機会が与えられた。5回1失点と結果を残したことで、次回以降どうなるか。スタミナは課題だろうが、コントロールは良いし、現状のローテーション投手を考えれば、次も機会を与えても良いのではないかと思う。
中央大の3年先輩となる牧。初回、いきなりノーアウト満塁で打席が回って来た。2017年の日本シリーズ第4戦以来というハマスタのマウンドに上がった和田に対して、1ボールからストレートが甘く入ったのを見逃さなかった。完璧に捉えた打球は、打った瞬間のホームラン。レフトスタンド上段まで届く7号グランドスラム。石田裕を大きく援護した。
3回先頭の今宮の打球は、鋭く投手の横を抜いて行った。センターへ抜けそうな打球に牧がダイビングで追い付き、素早くファーストへ送球してアウトにした。守備でも石田裕を助ける良き先輩だった。
試合を決めたのは筒香。NPB通算安打を999として迎えたこの日、4打席目は7回1アウト1、2塁のチャンスで回って来た。7日の初戦で対戦し、ストレートに押されながらも左中間に落ちる二塁打を放っている藤井との対戦。初球はアウトサイドへストレートが外れた。まだストレートで来ると読んだか。2球目は150キロのストレートが膝元に来たところ、完璧に捉えた。
打球はライトスタンドへ飛び込み、NPB通算1000安打もハマスタで、それもホームランで達成した。通過点だが、良い場面でメモリアルアーチが出た。降板し、最高の特等席で応援するファンになっている石田裕も、牧のグランドスラムに、筒香のメモリアルアーチと、自身のプロ初勝利だけでなく、フルコースのような試合に興奮していた。
ホームランで7点を奪った試合だが、石田裕の同期である井上が放ったタイムリー二塁打は価値があった。初回の得点の後、追加点が取れず、ソフトバンクの追い上げに怯える展開だったが、この5点目はチームにとっても大きかった。サードの守備でも軽快な動きを見せ、勝利に貢献。
開幕1軍に入って活躍した度会、松本凌、石上はファーム落ちとなったが、代わって石田裕、井上がしっかりと活躍。高卒の武田は別として、ルーキーたちが早くも活躍している。
この日、3試合ぶりにスタメンに入った梶原が、意地のマルチヒット。いずれも2ストライクアプローチで、ボールに逆らわず、センターから左方向へ打ち返した。三振が多い打者ではあるが、追い込まれてからこうした形でヒットが出れば打率も上がって来る。守備、走塁でも存在感を示して、レギュラー争いに加わって行きたい。
石田裕が5回で降りた後、リリーフ陣が何とかプロ初勝利を守り通した。まず6回は坂本が登板し、4番山川からの打順を簡単に3人で片付けた。徳山はオースティンのエラーも絡み、2失点で追い上げられた。一発逆転の場面で京山を投入した。
エスコンで2年ぶり1軍登板、6日は石田健が右肩の肉離れにより1回で降板。2番手として3イニングを投げた。3試合目の登板となる京山を思い切って登板させた。以前なら、こういった場面では自分のボールを信じ切れず、力が入ってしまってカウントを悪くしたかも知れない。
だが、イップスから立ち直り、思い切って投げ込むことができた。ストレート3球で押し、山川をキャッチャーファウルフライに打ち取り、大きなピンチを切り抜けた。入来コーチもきっと喜んでいることだろう。リリーバーとして新たな道を進み始めた京山。苦境のリリーフを支える存在になって欲しい。
ヤジ [Bad]
初回のグランドスラムの後、なかなか追加点が取れずに苦しかったが、6回に井上のタイムリー二塁打で挙げた追加点は理想的だった。そして、2点差に迫られたところでの筒香の3ラン。ホームラン頼みなところは変わっていないが、打線は効果的に得点を挙げた。
投手陣は終盤、追い上げに遭ったが、強力なソフトバンク打線を相手に何とか踏ん張ったと思う。ただ、ゆとりのあるソフトバンクは、8回から山川、近藤を下げていた。最後まで彼らが出ていたら違っていた可能性があることはしっかりと反省しておくべきだろう。
前日に痛恨の2ランを打たれた嶺井に、この日も2安打を許した。最初の打席は、2ボール2ストライクからのフォークを狙い打たれた。引っ掛けさせて併殺に取りたいところ、前日に続いて落ちるボールを選択して打たれた。
そして、8回も追い込んでからストレートをファウルされ、タイミングを外そうとしたのかウィックにナックルカーブを要求したが、高めから真ん中に入り、センター前へ弾き返された。リーグを代表する捕手になりつつある山本だが、移籍した先輩に詰めの甘さを示される形になった。もっと配球を突き詰めて行って欲しい。
キジ [Other]
ここまで6戦全敗の日曜のハマスタ。高い勝率を誇るマルハニチロの「サカナクロスゲーム」として行われたこの日、勝つのは「日曜の呪い」か「マグロ」か。結果、マグロが最強だった。ハマスタでは日曜日初勝利。
4連敗中にソフトバンク戦でルーキーが初登板という状況だったが、見事にプロ初勝利を挙げた。そして、牧のグランドスラムに筒香のNPB通算1000安打と、これまでの日曜が嘘のような試合になった。
ベイスターズファンの石田裕からすれば、サカナクロスゲームでヒーローに手渡されるマグロをピチピチさせるパフォーマンスをいつかやってみたいと思っていたかも知れない。それをプロ初登板の日にできてしまうのだから、持っている。2002年1月生まれで、マルハがベイスターズのオーナーだった頃を知らない世代のファンが、マルハニチロのサカナクロスゲームでプロ初登板し、初勝利を挙げるというのも数奇な運命。
交流戦は4カードが終了し、残り6試合を残すのみ。鬼門であるハマスタは3勝6敗で全日程が終わり、来週はビジターでの6試合。ここから少し成績を上げることができそうだ。交流戦連覇は既に絶望的だが、何とか5割を維持して終えるためにも、残り2カードは勝ち越しで行きたい。
久しぶりに月曜日を穏やかな気持ちで迎えられそうだ。この日の試合のハイライトをもう一度見つつ、次の戦いを待ちたい。
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