横浜DeNAベイスターズは、2021年のコーチングスタッフを発表した。既に発表されている仁志敏久2軍監督が新規に入閣するが、それ以外は配置転換のみにとどまった、改造内閣となった。
2021年コーチングスタッフ
位 置 | 背番号 | 氏名 | 年齢 |
監督 | 81 | 三浦 大輔 | 47 |
ヘッドコーチ | 83 | 青山 道雄 | 61 |
打撃コーチ | 77 | 坪井 智哉 | 46 |
打撃コーチ | 84 | 嶋村 一輝 | 39 |
投手コーチ | 73 | 木塚 敦志 | 43 |
投手コーチ | 72 | 川村 丈夫 | 48 |
内野守備走塁コーチ | 88 | 永池 恭男 | 47 |
外野守備走塁コーチ | 71 | 小池 正晃 | 40 |
バッテリーコーチ | 79 | 新沼 慎二 | 41 |
ブルペン担当バッテリーコーチ | 89 | 藤田 和男 | 40 |
巡回打撃コーチ | 76 | 田代 富雄 | 66 |
位 置 | 背番号 | 氏名 | 年齢 |
ファーム監督 | 87 | 仁志 敏久 | 49 |
ファーム総合コーチ | 82 | 万永 貴司 | 48 |
打撃コーチ | 90 | 大村 巌 | 51 |
打撃コーチ | 70 | 下園 辰哉 | 36 |
投手コーチ | 78 | 大家 友和 | 44 |
投手コーチ | 86 | 牛田 成樹 | 39 |
投手コーチ | 95 | 藤岡 好明 | 35 |
守備走塁コーチ | 85 | 柳田 殖生 | 38 |
守備走塁コーチ | 97 | 田中浩康 | 38 |
バッテリーコーチ | 74 | 鶴岡 一成 | 43 |
コーチングスタッフの継続性
通常は監督が代わるとコーチングスタッフも大きく変わるものだが、マイナーチェンジにとどまった。三浦新監督が昨年の1軍投手コーチ、今年の2軍監督からの内部昇格であるということも大きいだろうが、高田GMが就任した際にコーチングスタッフについては監督が決めるのではなく、球団が決めるという方針も大きく影響しているだろう。
実際、工藤公康氏と破談になった際は、達川氏をコーチングスタッフに入れたいという工藤サイドの要望が通らなかったと言われる。コーチングスタッフの人選、チーム編成はフロントの仕事、監督はその中で采配を揮ってチームを勝利に導くものという明確なラインがある。
どこかの夕刊紙が落合氏が監督の候補と書いていたが、検討すらされていないのでは。検討していたとして、この条件では落合氏も受けないだろう。
それはさておき、監督が代わってコーチングスタッフも大幅に入れ替えがあると、それまで積み重ねて来たコーチとの共有がほとんどゼロに近い状態になってしまう。プロ野球の世界は、マニュアルがある定型的な仕事ではないので、明確な引継ぎもないだろう。コーチが変われば、まず選手とどういう方向性を目指しているのかをイチから確認する作業からになってしまうはずだ。
一方で、ずっと同じコーチの下でやる場合に、劇的な変化は起こりづらいという点はあると思う。ただ、各選手が積み重ねてきたものを継続的に見て行けるという点で、球団としての育成はしやすい状況にあるのではないかと思う。
コーチングとティーチング
業種にもよるが、企業でもコーチングやティーチングの研修を用意していて、管理職あるいはそれに近いポジションの社員であれば、受けた方も多いのではないか。
よく、若手選手がミスをしたり、育たなかったりすると、「コーチは何を指導しているのか」というコメントを見かける。入団数年目の選手は「指導」されるシチュエーションや内容があるとは思うが、ある程度の年齢や実績になれば、指導することはまずないだろう。
投手の投げ方、打者の打ち方は、選手ごとに特徴が異なっているし、感覚に頼るところも大きい。コーチとして「こう投げなさい」、「こう打ちなさい」なんて指導はできない。配球にしたって正解はないと経験者も語るくらいなので、こういう配球が良いという指導はないと思う。
選手は、限られた現役生活を言わば個人事業主として全うするわけで、最終的な責任も個人にある。自分がどういう風に練習していくべきか、どんな能力を身につけ、どんなセールスポイントでプレーするのかは自分が一番よく理解し、知っていなければならない世界なのだろうと思う。
プロ野球の世界でコーチに求められるのは、ティーチングではなくて、その名前の通りコーチングなのかなと思う。部外者が書くような内容ではないかも知れないが、留任したコーチに対して結果が出ていないのにという趣旨のコメントを見ていると、いや違うんじゃないかなと感じてしまう。
前述したが、プロ野球の世界にマニュアルはないし、正解もあまりない。NGだけはあるのだろうが、それも当たり前のことばかりだろう。ミスした瞬間は考えられなかったとしても、後から振り返れば自分で気づくことばかりのはずだ。
そういう意味で、コーチの評価というのは凄く難しいのかなと推察する。プロだから結果で、というのが基本線。だが、Bクラスが続くチームは、毎年コーチを変える必要があるのか?前述した通り、選手とのコミュニケーションの中で、その選手の方向性を話し合い、お互いに知恵を出し合いながら、フォームの調整や練習メニューの考案をしていく上で、1年だけで結果が出るものではないと思う。
コーチングに必要なのは、もちろん経験もあるが、自身の経験でなくとも学習した知識などによる引き出しの多さが重要な気がする。自分自身もポジション的に上になってきていて、コーチングを使って後輩を育てるようなシチュエーションを何度も経験しているが、その時に必要なものは、いかに向き合って話を聞いて、本人に気づきを与えられるかだと思っている。
前述したように、ピッチングフォーム、バッティングフォームは人それぞれ違うので、コーチの立場からこうだ、と教えられるものではない。結局、本人の感覚で、本人が気づいて修正するしかない。しかし、本人には気付かないようなポイントがあったり、会話をしていく中で気づくこともあるだろう。
そうした対話などのコミュニケーションにより、その選手が持つ力を最大限に引き出してあげるのがコーチの役割なのではないかと思う。このコーチは現役時代の実績がないからどうだとか、ここまで選手が育っていないからどうだとか、ファンとして見える範囲でコーチを評価するのは困難だと思う。チームの勝敗の結果の責任を負うのは監督であり、編成だと思う。だからと言ってコーチは何も負わないわけではなくて、それを見るのが選手でありフロントだと思う。
勝敗に結び付きづらいし、選手が育たなかった場合にそれがスカウティングに問題があるのか、コーチングや育成に問題があるのか、切り分けることも難しい。結局は、どれだけ選手と向き合って、選手を理解し、アドバイスできたのかだと思う。これは数値による定量的な評価は非常に難しくて、まわりの人間の感覚によるところが大きいのかなと思う。もちろん、球団の中でコーチを何らかの物差しで評価はしているのだとは思うが。
コーチも育成
個人的には、ラミレス監督就任後、成績も上がって来ており、選手も順調に育って来ている中で、継続性のあるスタッフを維持できていることは非常に良いと思っている。
1軍は、もともと三浦新監督と年齢が(公称では)ひとつ下のラミレス氏が務めていたので、若いスタッフが中心。しかし、コーチとしても実績を積んできているメンバーで、引き出しも増えていることだろうと思う。そうした中、ベイスターズでのコーチングスタッフの経験が豊富な青山ヘッド、巡回コーチに変わった田代コーチがコーチも育てるというような体制ができていると思う。1軍に配転された嶋村、小池、新沼の各コーチは、2軍とは違った役割を学びながらということになるだろう。
プロの指導者としては初めてとなる仁志2軍監督だが、2019年までの2軍監督であり、今年も三浦2軍監督をサポートした万永コーチがそのまま残ってサポートする体制を敷いている。ここにもチームとしての育成の継続性に配慮した人事が見える。将来的に万永コーチも1軍のヘッド格に立つようなキャリアプランなのかも知れない。
この日、引退が発表された藤岡は、そのまま来季の2軍コーチとなることが発表された。今年は牛田コーチが新任で、大家コーチらのサポートの中、いろいろな経験を積んだと思う。藤岡コーチの場合は、ここ数年投手最年長として一番近くにいたので、アドバンテージを持った状態で新たなコーチ人生のスタートが切れると思う。今、ファームにいるコーチも、いずれは1軍のコーチになって欲しいと球団は思い描いているのだと思う。
監督、2軍監督の発表から間隔が空いたので、日本シリーズを戦っているソフトバンク、読売からの招聘などがあるのかと思ったが、藤岡の決断を待っていたのかも知れない。来季からの新体制で、これまでの野球をより進化させ、力を付けて行って欲しい。
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