DeNAが今季初の5連勝。6月の月間MVPを争う4番オースティン、1番桑原が支える好調な打線の援護もあり、先発投手が試合を作って5試合全てで勝利投手になっている。先発ローテーションの投手が揃わず、5回を持たないことが多い中で、5試合連続の勝利は非常に価値がある。
先発投手が試合を作れれば、打線は調子を取り戻しており、勝機が広がって来る。これまでの先発投手の状況を振り返りながら、今後の展望、期待を書いてみた。
成績
イニング | 自責点 | 防御率 | |
先発 | 352回1/3 | 210 | 5.36 |
救援 | 299回2/3 | 131 | 3.93 |
合計 | 652回 | 341 | 4.71 |
まずは先発と救援の成績の比較。チーム防御率4.71は12球団最低の数字で、広島が唯一、4.03で4点台だが、他の10球団は3点台。極端な話、毎試合他のチームよりも1点ほど多く取られていることになる。
そして、先発投手に限れば防御率5.36の惨状。75試合での1試合当たりの投球回数は4.7回で5回を下回っている。そして、5回を投げ切れずに降板した回数は32回。先発が投げたイニングと救援が投げたイニングの差も50回ほどしか変わらないところからも、救援への負荷の高さを物語る。
長いイニングを投げることを期待していた今永が、肩の手術の影響で開幕に間に合わず、平良が早々に離脱。上茶谷、大貫の大不振で先発経験が浅い投手を投げさせざるを得ず、どうしても早い回で降板が増えた。先に点を与えてしまうため、代打を出すケースも多かった。
投手 | 試 | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 | 打率 | 防御率 | 平得 | QS | HQS |
濵口 | 14 | 5 | 7 | 2 | .417 | .242 | 3.44 | 3.4 | 9 | 2 |
京山 | 5 | 1 | 4 | 0 | .200 | .303 | 6.86 | 6.2 | 0 | 0 |
平良 | 2 | 1 | 0 | 1 | 1.000 | .262 | 1.50 | 3.0 | 0 | 0 |
大貫 | 10 | 2 | 7 | 1 | .222 | .238 | 5.59 | 3.3 | 3 | 2 |
入江 | 4 | 0 | 4 | 0 | .000 | .205 | 5.29 | 2.0 | 0 | 0 |
上茶谷 | 4 | 0 | 3 | 1 | .000 | .226 | 8.49 | 3.5 | 1 | 1 |
阪口 | 6 | 3 | 2 | 1 | .600 | .288 | 3.23 | 3.8 | 1 | 0 |
坂本 | 8 | 5 | 3 | 0 | .625 | .241 | 4.37 | 4.3 | 2 | 0 |
中川 | 5 | 2 | 1 | 2 | .667 | .283 | 4.50 | 6.4 | 1 | 0 |
ピープルズ | 7 | 3 | 3 | 1 | .500 | .316 | 4.65 | 5.0 | 2 | 1 |
ロメロ | 4 | 2 | 2 | 0 | .500 | .267 | 4.89 | 4.8 | 0 | 0 |
今永 | 6 | 3 | 3 | 0 | .500 | .268 | 4.76 | 4.2 | 3 | 1 |
計 | 75 | 27 | 39 | 9 | .409 | .261 | 4.71 | 4.1 | 22 | 7 |
続いては先発投手ごとのチーム成績。先発投手自身の成績ではない。自身に勝ちは付かなくともチームが勝つことが重要。
こうして見ると、開幕ローテーションに入っていた京山、大貫、入江、上茶谷が先発した試合でのマイナスがかなり大きい。この分を取り戻す必要があるが、勝ち越しているのは坂本、阪口だけ。中川は自身が早い回に降板した2試合でチームが勝利している。
濵口も自身は5勝5敗の五分に戻したが、後続が打たれて敗れておりマイナスとなっている。借金を減らして行くには大きくマイナスとなっている大貫、上茶谷が取り戻すと同時に、今永、阪口らの先発試合での貯金を増やして行く必要がある。
濵口は、チーム全体の平均得点4.1に対して、自身の先発試合では3.4点しかもらえていない。それを考えれば健闘していると言える。大貫も3.3点であり、特に4月が打てなかったことにより、彼の投球を苦しくした可能性もある。阪口、上茶谷も今後の登板ではもう少し援護が得られるかも知れない。
打線の援護を生かすも殺すも、先発投手が試合を壊さないことだ。大量失点してしまった後で、反撃によって得点が入ってもチームの勝利には結びつかない。東京ドームの11-12のように。そうした意味で、現状QSは22試合に留まっており、この数字を上げて行くことが、チーム全体の流れを良くすることになるだろう。
中6日の週1回の登板で、6回3失点というのはハードルが低いとも言われるが、DeNAの先発投手陣にとっては簡単なことではなく、3試合に1回もないという状況。まずはここを目指すことが重要だろう。
ローテーションの変遷
6月26日に濵口が登録抹消となり、開幕ローテーションだった6人全員が登録抹消を経験したことになる。なかなか陣容が揃わないローテーションの変遷をまとめてみた。
週 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
1 | 濵口 | 京山 | 平良 | 大貫 | 入江 | 上茶谷 |
2 | 濵口 | 京山 | 平良 | 大貫 | 入江 | 阪口 |
3 | 濵口 | 上茶谷 | – | 大貫 | 入江 | 阪口 |
4 | 濵口 | 上茶谷 | 坂本 | 大貫 | 入江 | 阪口 |
5 | 濵口 | 上茶谷 | 坂本 | 大貫 | 京山 | 阪口 |
6 | 濵口 | 中川 | 坂本 | 大貫 | ピープルズ | 阪口 |
7 | 濵口 | 中川 | – | 大貫 | ピープルズ | ロメロ |
8 | 濵口 | – | – | 大貫 | ピープルズ | ロメロ |
9 | 濵口 | 今永 | 坂本 | 大貫 | ピープルズ | ロメロ |
10 | 濵口 | 今永 | 坂本 | 中川 | ピープルズ | ロメロ |
11 | 濵口 | 今永 | 坂本 | 中川 | ピープルズ | 京山 |
12 | 濵口 | 今永 | – | – | – | 京山 |
13 | 濵口 | 今永 | 坂本 | 中川 | ピープルズ | – |
14 | 濵口 | 今永 | 坂本 | 大貫 | – | 阪口 |
15 | (上茶谷) | (今永) | (坂本) | (大貫) | – | (阪口) |
開幕戦が金曜日なので、おおよそ金~木を1週としているが、登板日が多少入れ替わっているので、1~6は先発順序を表すものではない。雨天中止や交流戦予備日などで6人が先発しなかった週もある。
開幕ローテーションに入っていた平良が2度の先発だけで離脱、その後トミージョン手術に踏み切った。入江は4連敗でファーム落ちとなり、その後右肘の違和感で実戦から離れている。京山も最初の2度でローテーションを外れ、その後は他の投手の離脱などで数回、先発の機会を与えられているが、生かせていない。
代わってローテーションを支えたのが阪口と坂本。阪口は平良の離脱により7番目の先発から昇格。三浦監督の初勝利に貢献し、ローテーションに定着した。坂本も4月後半に1軍へ上がり、10連敗を止める活躍を見せた。だが、ゴールデンウィーク中の登板で、坂本は打球が直撃、阪口は右肘の違和感で離脱となった。
このタイミングで外国人投手が1軍へ昇格。ピープルズは昨年の経験も生かして結果を残したが、ロメロは4試合の登板で勝ち星なしで、再調整となった。
交流戦直前に今永が復帰。しかし、同時期に開幕からローテーションに入っていた大貫が不振で登録抹消。その間は中川が先発に入って凌いだ。好投もあった中川だが、プロ初勝利はならなかった。
交流戦明けにはピープルズが投球中に腰を痛めて離脱。14週ローテーションを守った濵口も左脇腹の違和感で初の登録抹消となった。代わってファームで調整していた大貫、阪口が復帰した。
7月2日から15週目に入った。濵口の代わりに上茶谷が予告先発として発表されていたが、雨天中止によりスライドせず、翌週のマツダでの先発に回ると予想される。中止により先発は少なくとも5人で足りる。
今後の展望
オールスター前は9連戦となっており、ちょうど梅雨の本番というところで、バンテリンドーム以外は屋外の球場であるため、どれくらいの試合が消化できるかわからないが、6人もしくは7人の先発が必要となる。上茶谷が久々に1軍で先発することになりそうだが、もう1人くらいは必要になりそうだ。
濵口の左脇腹の状態が気にかかるが、軽傷であれば12日の甲子園あたりでの先発を考えているかも知れない。あとは、国吉とトレードで移籍した有吉。ファームでの前回の登板では3発を浴びて5回6失点と不安を残した。オールスター前に一度、1軍で先発させて様子を見るだろうか。
前述したように、半分近い試合で先発が5回を投げられていない。この段階から、QSをマークするような状況に上げて行かなければ、上位進出は難しいだろう。6月は12勝8敗2分の好成績だったが、オールスターまでこのままのペースを維持して中断期間に入りたい。天気も睨みながら、状態の良い先発を優先して使って行きたいところだ。
月 | 試 | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 | 打率 | 防御率 | 得 | 失 | 本 |
3 | 5 | 0 | 4 | 1 | .000 | .274 | 5.65 | 20 | 29 | 2 |
4 | 26 | 6 | 17 | 3 | .261 | .217 | 4.70 | 76 | 125 | 18 |
5 | 22 | 9 | 10 | 3 | .474 | .266 | 4.62 | 101 | 108 | 31 |
6 | 22 | 12 | 8 | 2 | .600 | .302 | 4.59 | 110 | 103 | 24 |
計 | 75 | 27 | 39 | 9 | .409 | .261 | 4.71 | 307 | 365 | 75 |
全く打てなかった4月から、打線は劇的な改善で6月のチーム打率は3割を超えた。しかし、投手陣は4点台後半で、誤差レベルの変動はあるが改善していない。最初に見たように救援の防御率は3点台であり、先発がQSでイニングを投げれば負荷が減り、さらに改善できるだけの余地がある。
中断期間明け、濵口、今永、大貫を軸に、阪口、坂本が現状の投球を維持し、そこへ上茶谷、ピープルズあるいはロメロが入って来ることが理想。有吉はまだ未知数な部分はあるが、QSを狙える投球ができるようであれば、貴重な戦力になりうる。
打線は水物ではあるが、主力に大きなケガがなければ、ある程度計算できる状況になって来ている。数字からも明白で、当たり前の話ではあるが、チームの浮上の鍵は先発投手が握っている。
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