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2021年はヤクルトの20年ぶり日本一で幕を閉じる

2021年の日本シリーズは11月27日、ほっともっと神戸で第6戦が行われ、延長12回の末、ヤクルトが勝利して日本一を決めた。ともに2年連続最下位からリーグ優勝し、史上初の対戦となったが、どの試合も僅差の熱戦。2019、2020年はいずれもソフトバンクが読売に4連勝という一方的な展開だっただけに、野球ファンにとっては楽しめる日本シリーズだったのではないか。

当ブログではベイスターズファンから見たヤクルト日本一の感想を書いてみたいと思う。

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劇的な投手力の改善

今年のヤクルト躍進の一番大きな要因は、劇的な投手力の改善だろう。ここまで1年で改善するというのは、あまり例がないのではないか。単純な数字だけで見ても、2020年の防御率4.61から2021年は3.48と1点以上の大幅な改善が見られた。

大きく戦力が変わったわけでもない。ドラフトでは1、2位で大卒の即戦力投手を指名したが、木澤、山野ともに1軍の戦力になっていない。補強も開幕直前に読売から田口が加わったくらい。昨年からの現有戦力を押し上げてのこの数字は信じがたいものがある。

優勝していながらも、投手のベスト10にはベイスターズと並んで誰もライクインしていない。規定投球回数に達した先発投手が誰もいなくても勝てているのは、先発投手をきっちりと管理し、力を発揮できるコンディションを整えていることと、清水、今野を中心としたリリーフの活躍があった。

高卒2年目の奥川は、先発後に登録を抹消し、中10日以上の間隔を空けて投げさせた。絶対に無理はさせず、じっくりと育てるという強い意志を感じた。それに伴い、先発投手を7~8人用意し、間隔を広めに空けて投げさせた。もともと先発投手が豊富というチームではないが、残留した小川を中心に、既存の投手が昨年以上の結果に結び付けた。

規定投球回数もそうだが、2桁勝利の投手もいない。これまでのプロ野球ではなかったことで、奥川の存在やケガなどにより、そうせざるを得ないという面もあるが、高津監督の新しい投手起用が見事にハマった。クライマックスシリーズ、日本シリーズで見事な投球を見せた奥川も、その起用で投げる度に自信と力を付け、エース的な存在に上がって来た。それでも、日本シリーズの第6戦に先発させることはなかった。このブレない取り組みがこの2年の中で劇的に投手陣を改善させた源泉なのだろう。

そして、この投手力の充実により、沢村賞投手の山本由伸に勝ちをつけることなく互角に投げ合うに至った。それが日本一に大きく繋がったことは明らかだろう。

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個人的にMVPは清水

一番最初に今年のヤクルトは違うと思い知らされたのは、4月30日のハマスタでの試合だった。もちろん、ホーム開幕戦でショックな逆転負けを喫し、2回で9点を取りながら追い付かれた最初のカード、ソトとオースティンが合流も打線が低調で3タテを喫した神宮でも、痛い思いはしているがどこかで陣容が揃っていないことのせいにしていた。

多くの解説者が最下位と予想していたように、管理人も投手力の厳しさから最下位に予想。ベイスターズも外国人が揃わず苦戦するだろうとは思いながら、

自分も含めてヤクルトは投手が厳しいという印象を持っていたが、バカにしてはいけない。DeNAよりよっぽど良いリリーフが整備されている。ただ、ヤクルトの場合はケガなく年間を通して活躍できるかが問題なのだが。

ケガがなければという注釈を付けながらも、ヤクルトの投手陣の充実ぶりに危機感、羨望を抱いたのを覚えている。この日投げた金久保は年間を通しては投げられなかったが、ベイスターズから3勝を挙げ、優勝には貢献した。そして、近藤は素晴らしい投球を続けていたが、心配した通り故障で離脱してしまった。

それでも、今野が代わりに役割を担った。ヤクルトに移籍した2020年に20試合で2.84と手応えを掴み、今年の大躍進に繋がった。リリーフで7勝を挙げ28ホールド。後ろの2人が強力であることに加え、彼の存在は本当に相手からすると嫌だった。5月1日のハマスタで、1/3回で5失点した為、DeNA戦の数字は良くないが、それ以上の存在だった。

ここ数年のヤクルト投手陣だと、終盤にいつでもひっくり返せるという感覚があったが、今年に関しては全くチャンスがなかった。それをもたらしたのは、ホールドの日本記録を達成した清水の存在だろう。石山が不振でマクガフに代わったが、8回を清水が守り続けた為に、それほど大きな影響に至らなかった。DeNA戦は0.64ということで、よりその存在が大きく映ったが、紛れもなく優勝の大きな要因だろう。個人的にはMVPは清水だと言いたい。彼の存在がヤクルト投手陣に与えた影響は計り知れない。

日本シリーズでは初戦にサヨナラ負け、5戦でもジョーンズに決勝ホームランを浴びたマクガフ。もともと完璧に抑えるというよりはタフネスなパワーピッチャーということで重宝していたが、今年はクローザーに転向し、安定感を見せた。オリンピックにも出場し、一番最後までよく投げたと思う。第6戦では気持ちを切り替え、10回途中から3イニング目まで跨いで、見事に胴上げ投手となった。2017年の日本シリーズでのサファテを見るようだった。

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絶妙な先発投手の起用、攻めの配球も

開幕当初は、移籍した田口を先発で起用していたが、負けが続いたために読売でも務めていたリリーフに転向し、これが功を奏した。開幕直後、金久保がローテーションに入り、ベイスターズ相手に好投した。スアレスも当初はローテーションに入っていたが、その後不振からファームで調整し、終盤はリリーフで存在感を見せた。

入れ替わるようにして、ベイスターズが苦しんだサイスニードも6勝を挙げる活躍を見せた。家庭の事情から日本シリーズに出場せず帰国したが、1年契約で残留している。さらに、後半には高橋、原が相次いで1軍に復帰し、素晴らしい投球を見せた。このあたりの投手の活躍が、シーズン終盤での逆転優勝と日本シリーズでの勝利に結び付いた。彼らがしっかりとローテーションに入って来たからこそ、田口やスアレスをリリーフに回して、登板過多の投手の負担を軽減できた。非常にいい形で回ったと思う。

そして、大ベテランの石川も健在だった。シーズンで4勝も素晴らしいが、日本シリーズではオリックス打線を翻弄した。ベイスターズも特に神宮で対戦した時は、このように術中にハマるのだが、パ・リーグにはなかなかいないタイプで、オリックスの打者もなかなか合わせられなかったと思う。

ここまで投手のことを書いてきたが、その裏にあるのが日本シリーズMVPに選ばれた中村の存在だろう。これまでのヤクルトの投手力の悪さの一端は彼にあるように言われてきた。打てるがリードは、という評判を覆すかのように、ヤクルト投手陣を引っ張ったと思う。

キャッチャーが3割近くを打ち、外国人2人の間で見事に繋ぎの役割を果たし、投手陣をしっかりとリードするのだから、非常に価値がある。4月30日の試合を観て書いたように、今年のヤクルト投手陣は、(石川を除いて)全体的にボールの力があった。そこにはフィジカル面に加えて、ホークアイをいち早く導入するなど、メカニズムの面もしっかりと研究した結果なのだろう。

そのお陰もあり、全体的に攻めの配球が目立った。昨年以前ならかわしていたような場面でも、力強いボールで攻めて来る印象があった。「絶対大丈夫」が配球にも表れ、打者が押されていた。特にベイスターズは一番そこに戸惑い、やられてしまったと感じた。

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打線はもともと強力だが勝負強い

ベイスターズも同じようなことを言われる。打線は強力だから、投手陣さえ良くなれば上位に行けるんだけどねと。開幕前のヤクルトにも同じことが言われていた。青木、山田、村上の中軸は怖さ、迫力がある。だが、それ以外の部分が課題だった。

2020年は防御率だけでなく、チーム打率もセ・リーグの最下位。得点は中日の429に次ぐリーグ5位の468と、少なくとも昨年については得点力のあるチームではなかった。個人的にも順位予想の時に書いた、山田のコンディションがこれに大きく関わって来る。

2020年は.254、12本塁打と不振に終わった山田が、2019年と同レベルの成績を残したことで、青木、村上との間で繋がりが生まれ、得点力が飛躍した。12球団最高の625得点をマークし、改善した投手陣を強力に援護した。

村上の存在はもう語るまでもなく、チームの大黒柱。高卒4年目にしてこの活躍。来年入って来る大卒ルーキーと同じ歳になるが、この世代を代表する選手として、打つことだけでなく存在感を発揮していくことになるだろう。

その脇を固める新外国人2人も素晴らしい活躍を見せた。今年は、コロナ禍の影響で来日が開幕後となり、非常に難しいシーズンだった。特に新外国人はほとんどが活躍できないままシーズンを終えた。それだけに、オスナとサンタナが早い段階で日本野球に順応し、成績を残してくれたことはヤクルトの打線を強力なものにした。

先にも触れたが、オスナ、サンタナを並べず、間にキャッチャーの中村を繋ぎとして挟めるのもヤクルトの強み。石井琢朗コーチも、上田氏のYou Tubeに出演して語っていたが、これが非常に効果的で、相手としては嫌らしいオーダーだった。

青木から続く打線に、走力も含めた攻撃力をもたらしたのが塩見。3月30日からのハマスタ開幕カードでは、塩見のやりたい放題だった。あそこで完全に自信を与えてしまい、それ以後もDeNA戦での活躍は目覚ましかった。1番で21盗塁をマークしながら、得点圏打率.325で59打点を挙げる活躍。ヤクルトの勝負強さが表れている。

最後に、代打の神様として活躍した川端。日本一を決める一打を放った通り、今年のヤクルト打線の勝負強さを象徴するような活躍。大きな故障で彼にとっては苦しいシーズンが続いていたと思うが、代打と言うポジションにも慣れ、首位打者を獲得した打力を生かすことができた。昨秋、フェニックスリーグにも参加した復活への思いが、少し形になった。

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6勝17敗と惨敗、最下位から雪辱へ

今季の最後の対戦でも、ハマスタで胴上げを見せつけられ、6勝17敗2分と惨憺たる成績に終わったヤクルト戦。誰よりもその強さは身に染みている。ここ数年は勝ち越しのシーズンも多かった相手に、ここまで負けるとは思ってもみなかった。だが、両者の差は大きく開いた。

日本一決定後、来年は最下位からベイスターズが日本一へ、ということでTwitterのトレンドに「ベイスターズ」が入るほど、ファンは来年への思いを強くした。確かに今年は2年連続最下位だったヤクルト、オリックスがリーグ優勝し、日本シリーズで対戦した。しかし、それを来年もできるほど甘くない。だが一方で、2015年に最下位だった時ほど、絶望的で力のない最下位とも思わない。

OBがコーチとして復帰して意気が上がっているが、やるのは選手。そして、大きな補強も望めない。その点はヤクルトと同じ。取り組み方や使い方、そして何よりも選手たちの頑張りでこれだけ劇的な改善ができるということは証明された。新たなコーチが導き、選手がどれだけ力を発揮できるか。ヤクルトの真似をしろとは言わないが、参考になる部分は大きいのではないか。

最下位からの頂点に期待している。

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